|
警告:この記事にはK812に関して批判的な内容が書かれています。K812のオーナーの方やAKG信者が見ると気分を害する可能性があるので、見ないことをお勧めします。 K701を買って、「ふん、ヘッドバンドの針金をLRの渡り線に使うセンスがない奴が作った割には良い音出すじゃないか。」と感心したので、最上級のK812-Y3を買ってみた。今年の5月に注文したのですが、部品が調達できずに生産できないのかわかりませんが、品薄で届くまで半年かかってしまいました。 このK812-Y3。ケーブルが片出しで3ピンのレモ端子というやつで、これだとケーブル交換してもLR-線を独立させられないんだよねぇ。しかもLRの渡り線にフィルムケーブル使ってるんだよねぇ。本当にセンスないよね。これが私がAKG買わない理由ですよ。 それでもなんで買ったかって?K701に音に感動したから。K812はどんな音がするんだろう?と思ってな。ただそれだけだ。ケーブルも交換するつもりもないし、しょうもない音しか出ないようだったら、バーンインノイズの実験用に使うし、納得できる音が出るならHD650やK701のように視聴時の比較用基準機にでもしようと思っている。 箱から出した時の第一印象ですが、大きさはK701と変わらないはずですが、そんなに大きく感じない。それから高級感はあまりない。ビルドクオリティーは並。HPT-700と並べてどちらが高いヘッドホンか見た目で当てるのは難しいレベル。nighthawk carbonの方が高級感があります。でもAKGはヘッドホンをプロの道具と見なしているので道具としてならこれで良いのでしょう。K701のゴミのような質感と違って、道具としての質感はちゃんと備わっている。 次に接点保護材CAIG G5を端子に塗って、ケーブルを装着。ウェットティッシュで拭き掃除もしたが、K701の時のように黒い汚れは付着しなかった。そして音を聴こうと装着したのだが、その瞬間、「このヘッドホンはダメだ」との結論に到達した。ヘッドバンドが全開でようやくまともな装着位置になる。ヘッドバンドのクリアランスが少なすぎて頭大きい人はまともな装着位置で聴けない可能性がある。他のヘッドホンで私が文句言っているのはSRH1540,DT880E/600ですが、これらは全開から一メモリ分の余裕があります。K701は装着してみるとヘッドバンドストッパーの少し手前がちょうど良い感じで、限界からほんの僅かに余裕がある。K701はヘッドバンドの調整幅はSRH1540やDT880E/600とあまり変わらない感じです。意外とヘッドバンドの調整幅狭いんだね。問題はK812の調整幅はそれらより少し狭いと言うことです。ちょっと待って!あんだけ文句言ってたSRH1540やDT880E/600よりも狭いってどういうことなの・・・ このヘッドホンは設計が全然駄目だなぁ。と思いつつ。でも音が一番大事だからね!と気を取り直すことにした。 さてその音。(※まだ鳴らし始めて3時間程度です) ATOLL HD120で試聴。 とにかく音が曇っている。nighthawk carbonと比べても曇りは多い感じ。解像度はnighthawk carbonの-50段程下。基準を普段使っているEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))にして、EPT-700の解像度を+470段と言うことにすると、解像度はHD650で290段、HPT-700で320段(※現在追加エージング中で音質も変わっているので基準には使えない)、nighthawk carbonで350段と言う感じなので、K812は大体300段クラスの解像度と言った感じでしょうか。HD650とどっこいレベル。バランスは整っていて癖も少ないのですが、nighthawk carbonやHD650ほどの音楽的表現力は伴わない感じです。聴いててつまんないんですよね。 傾向はニュートラルだがやや曇り傾向。詰まり感ややほんの僅かにあり。閉塞感なし。抑圧感ややほんの僅かにあり。音色は普通。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルまであと1.70歩。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の-170段程下。+300段の解像度。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。HD650(約800時間,非ランダム再生エージング,HD120再生)はEPT-700基準だと+290段の解像度なので、K812はHD650の103%の解像度と言うことになる。奥行きは34m(カンストは当然してない) K701(エージング4325時間以上)と比べると、K701の圧勝でK812は勝負にならないです。エージング全然してないから、しょうがないですけど。K701の未エージング状態での音の記録を見ると、K701はHD650のちょい下程度の解像度と言うことなので、未エージング状態同士の比較なら、K812はK701よりも少しだけ解像度が高いが、音が濁っていてクリアネスで劣り、自然さでも劣り、奥行きでも劣る。K701と比べてK812が絶対的に良いとはとても言えない。 ただし、高域の歪感はK701(エージング4325時間以上)よりも少なかったので、エージングが進んで濁りが減って解像度が上がってくると、K701よりも良い音に仕上がる可能性は高いと思います。だけど世間で言われるような圧倒的にK812の方が優れているというような差は付かないんじゃないかとも思います。現在の私の印象は、未エージング状態でHD650とどっこいの音が出るなら、10万円のヘッドホンとしては十分優秀と思いますが、K701の上位機種としてみると「なんだ、この程度か」と言う印象。1.5Tの磁気回路とCCAW採用してSuperior reference headphonesの名前を冠して「所詮この程度か」と。「圧倒的なのは価格だけだな」と。。。 未エージング状態での印象なので、話半分に聴いてくださいね。nighthawk carbonのように激変する可能性は十分あるからね。ところでK812はSuperior reference headphonesとサイトや箱には書かれていますが、なぜか本体にはreference headphonesと書かれています。もしかしたら営業側はSuperior referenceで売りたいのだが、技術者側はK701とK812どちらもreference headphonesと言う認識なのかもしれませんね。 20221202_追記 2022/12/02_エージング時間 217時間_エージングはDAPで日替わりで1アルバムリピート再生 ATOLL HD120で試聴。 ユーミンの松任谷由美 ノイエ ムジーク disc2 曇りが取れてきたと言うよりも再生するアルバムによっても音質がかなり変わる印象。正確には音の曇り具合が変わる。ちなみに今回は曇りが少ない方。これはnighthawk carbonみたいなヘッドホンかもね。このヘッドホンのレビューってみんな言ってることが違うんだけど、聴いてる音自体が違うんだろうな。現状エージング方法をnighthawk carbonと同じ方法にしているので、それと比較しておくことにする。 傾向はニュートラルだがほんの僅かに曇り傾向。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色は結構良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルまであと0.7歩。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の-40段程上。+430段の解像度。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。HD650(約800時間,非ランダム再生エージング,HD120再生)はEPT-700基準だと+290段の解像度なので、K812はHD650の148%の解像度と言うことになる。奥行きは44m nighthawk carbon(エージング9576時間以上)と比べると、nighthawk carbonより濁りが少なく、歪感も少ない。解像度は2割増しと言う感じで、217時間でこれなら、nighthawk carbonよりもポテンシャルが高いと判断して良いだろう。nighthawk carbonが9.5万の価値があるとしたら12万くらいの音は出ているだろう。だけど、nighthawk carbonよりボリューム感が劣っていて、快活な表現は苦手な感じ。このあたりは、まだ200時間程度しか鳴らしていないので2000時間、4000時間鳴らしたらまだ全然変わってくると思う。あとは、低音は出ているけど、ほぼフルオープンなので下の方までは伸びてない気がする。計測上は出ているそうなのですが、聴感上ではそう感じない。K701やnighthawk carbonの方が下は出ているように聴こえる。原理的に考えてフルオープンは低音が弱くて普通だと思いますが、k812は十分量感が稼がれてて不足は感じないです。 それからk812の傾向についてですが、ボーカルの鳴り方がHD650のようなモヤっとした付帯音をまといます。全体的にはHD650とは違う音ですが、雰囲気は似ている部分はあります。高域もK701のような荒れ方をしないですし、K701の上位互換と言うよりはHD650の発展形と言った方が近い気がする。K701をベースに原音に近づけたと言うよりも、HD650をベースに原音に近づけたと言う音。HD650の付帯音を少なくして、高域の歪感を減らして、低音の量感も少し減らして、フルオープンにして超低音域への伸びが悪くなったのだが、その代わりヘッドホンにありがちな圧迫感を激減させると、大体K812の音。こう書くとHD650とは雰囲気が似てる部分があるってだけで、ずいぶん違う音だね。。。HD650の発展形は言いすぎたか?と聴き比べてみましたが、細かいところを上げると違うところはたくさんありますが、言葉で言うほどにはかけ離れていない音です。スッキリしたHD650と言う感じ。でも全てにおいてHD650を上回っているわけでもないので上位互換ってほどでもありません。HD650は推定で800時間くらい鳴らしているので、800時間くらい鳴らしたら、また比較してみようと思います。 20221230_追記 K812を800時間以上鳴らしました。K701のエージングの項目でも書いたように、現状K812は音質の良くない方法でエージングしている。これはnighthawk carbonの時のように「いくらエージング時間を長くとっても、それだけでは音質は向上しない」を実証するためだ。nighthawk carbonやHPT-700だけではサンプル数が少ないからね。3000時間までは1アルバム順再生でエージングして、3000-4000時間は1211曲をランダム再生でエージングする予定。まぁ、800時間鳴らしても1アルバム順再生だと大した音出していないから、この感じだと3000時間鳴らしても大した音は出ないだろうけどね。 今回、この記事を書いているのはHD650と比較するため。HD650は推定エージング時間が800時間で条件をそろえて比較するにはちょうどいいからだ。条件をそろえるといっても、1アルバム順再生ならどれも同じではなくアルバムでも音質が変わる。特にK812はものすごく変わるので、今回は音質が良かったアルバム「Derek & The Dominos_Layla And Other Assorted Love Songs」を事前に15時間ほど再生してから比較することにしました。もちろんHD650,nighthawk carbonでも再生しています。そのためHD650,nighthawk carbonも今までとは音が違っています。 ちなみに「Derek & The Dominos_Layla And Other Assorted Love Songs」にはレイラって曲が収録されています。これはエリック・クラプトンがビートルズのジョージ・ハリスンの奥さんに向けて作ったラヴソングだそうです。その後奥さんと結婚して離婚するというバックストーリーのある曲です。三菱モーターのCMにも使われていました。イントロがめちゃくちゃかっこいい曲です。 他には「Chuck Berry_JOHNNY B. GOODE CHUCK BERRY BEST HIT 25」も音質が良かったです。JOHNNY B. GOODEはバックトゥザフューチャー1でマーティーが弾いていた曲です。JOHNNY B. GOODEが発表されたのは1958年で、マーティーがタイムスリップしたのは1955年。JOHNNY B. GOODEが世に出る前です。作中ではマーティーの演奏を電話越しに聞いたチャックベリーがインスピレーションを得てJOHNNY B. GOODEを世に出すというストーリーになっています。 さて問題のK812の音。 16:53 2022/12/27__エージング時間 831時間_エージングはDAPで日替わりで1アルバムリピート順再生 Derek & The Dominos_Layla And Other Assorted Love Songs これはバランスの良い音。ボリューム感が不足している以外は問題がない音。 傾向はニュートラル。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色は結構良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルまであと0.3歩。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の-30段程下。+440段の解像度。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは48m それから300時間を超えてから超低音への伸びが改善されている。以前超低音域への伸びがないと言っていたがその問題は完全に解決している。nighthawk carbonと比べても遜色ありません。また575時間時も同じアルバムを再生しているが、その時と比べて解像度は変わらないと判定しているが、曇り感は無くなっている。ただパワー感の無さ、ボリューム感の不足はまだ改善されていない感じ。 ※ボリューム感の不足と言うのは、ボリュームを物理的に上げていても音量が上がっていないような感覚がついて回ると言うことです。パワー感の無さもそこに起因するのでしょう。低音が出ているとか出てないとかそういうのとは関係ないです。 HD650(エージング時間推定800時間以上, 直前にDerek & The Dominos_Layla And Other Assorted Love Songsを15時間再生) HD650の方が生命感もパワー感もあって活力のある音。自然さもHD650の方が上だね。K812が優れているのはSNだが、僅かに優れているだけで、HD650もK812に肉薄するSN感で鳴っている。HD650でも「もうちょっとSNが良くなってくれれば・・・」と感じるのだが、かと言ってK812に切り替えるとK812も思ったより濁っていて、HD650大差ないとなってしまう。しかも解像度もHD650の方が上で、K812は細部が潰れて聴こえてしまう。エージングの条件によってヘッドホンのヒエラルキーがひっくり返るのは経験しているので、条件によって違うだろうけど、今回はHD650の方が音が良いと判定せざるえない。と言うかHD650は私が思っているよりポテンシャルがあるのかもしれない。力強くて色っぽくてそれでいて自然に聴こえる。音楽的な音。よく言われる籠りっぽいと言う印象はほとんどなくなっている。 傾向はニュートラルだがやや柔らか傾向。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色は結構良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルまであと0.2歩。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の+100段程上。+570段の解像度。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは44m nighthawk carbon(1アルバム日替わり順再生,9576時間以上, 直前にDerek & The Dominos_Layla And Other Assorted Love Songsを15時間再生) nighthawk carbonは今までの状態だとちょっとモヤっとした感じがついて回る感じだったんだけど、そう言う感じが無くなって少し硬めの音になった。音痩せも出ていてちょっと音色が不自然だね。自然さではHD650が最も良く、次いでK812,nighthawk carbonと言う感じ。解像度はHD650には及ばないもののK812より僅かに上。全体的にはK812の方が良い音だ。解像度はnighthawk carbonが上でも音色が思ったほど良くないんだよね。また、K812同様パワー感の不足が出ている。nighthawk carbonだとこの症状はあまり出なかったので、このボリューム感不足は音源との相性もあるかもしれない。ただK812では音源変えても解消したことないんだよね。 傾向はニュートラルだがやや硬め傾向。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はそれなり。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルまであと0.8歩。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の+10段程上。+480段の解像度。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは48m 結論としては条件を極力あわせて比較した結果、HD650が最も音が良いと言う結果になってしまった。やる前はK812にHD650が勝てるわけないと思ってたんだけど。それどころかnighthawk carbonが負けるとすら思っていなかったのだが。HD650って実はすごいヘッドホンなのかな?条件によって変わる可能性があるので、今度は1211曲のランダム再生で4000時間まで引っ張って比較してみようと思う。 20230308_追記 K812を2500時間以上鳴らしました。ここらでエージング法を1211曲のランダム再生に切り替えるので、記録しておこう。予定では3000時間のつもりだったのですが、ランダム再生は結構長めに取った方が良いかもと言うことで早めに切り上げる事にしました。あと、飽きてきた。 さて、K812の音。 K812_エージング時間 2519時間_エージングはDAPで日替わりで1アルバムリピート再生 アルバムは今井美樹_PRIDE とり合えずHD650と比べると音が鈍って潰れて聴こえる。聴いた瞬間これは太刀打ちできないとすぐわかる。 ※(HD650はランダム再生エージング) 傾向はニュートラルだがやや鈍り傾向。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はかなり良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルまであと0.2歩。解像度はK701(エージングタイム4752時間以上, 1211曲のランダム再生, 0.6Vrms, +1160段(これを基準とする))の-300段程下。+860段の解像度。K701の74%の解像度と言ったところ。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは24m(カンスト) エージング初期のころはてんで大した音ではなかったのですが、2000時間以上鳴らしてかなり良くなってきました。EPT-700と比べても音良いですね。nighthawk carbonの経験から予想ではもっと悪い音質で頭打ちになると思っていたのですが、エージング法が悪くてもエージング時間でかなり音質が改善するようです。ですが1アルバムリピート再生では音が濁ってくるのはどうしても避けられないようです。あと、パワー感の無さ、ボリューム感の不足は少なからずついて回ってくる感じ。 あと高域の歪感。これもK701より少ないです。解像度こそK701の劣っていますが音色もK701よりも良い感じなので、ランダム再生エージングにしたら確実にK701は上回るでしょう。このあたりは腐っても鯛。流石はAKGのフラッグシップと言ったところでしょうか。腐ってるけどの。でも、随分前からランダム再生しているHD650がK701よりもかなり良い音で鳴ってしまっているのよね。。。HD650の音があまりに良すぎるのでK812をランダム再生でエージングしてもHD650を上回るのは難しいんじゃないかと思っている。仮に上回れてもちょっと良い程度で圧倒することは出来ないだろう。まぁ?勝負はやってみるまで分からない。1500時間ほどランダム再生エージングしてHD650とガチンコ勝負させよう。 2023519_追記 警告:この記事にはK812に関して批判的な内容が書かれています。K812のオーナーの方やAKG信者が見ると気分を害する可能性があるので、見ないことをお勧めします。 みなさんご存知のように、私、K701をべた褒めするくらいAKG信者なんですよ〜。それでAKGで一番良いの買ったんですけど、「もうAKG信者辞めようかな・・・」と思ったのがこのK812です。私のレビューって、褒める時も貶す時も極端に感じられるかもしれませんが、これは感じたままを率直に表現するために褒める時も貶す時もブレーキを踏まないだけなのです。ブレーキが壊れているわけではありません。あえて踏まないだけ。 とりあえず、いつも通りのテンプレでレビューしていきたいと思います。読むのがめんどくさい人は最後の「K812まとめ」を読んでね。 K812を4000時間以上鳴らしました。2519時間からランダム再生開始。ランダム再生開始から1514時間鳴らしています。以前書いたように、HD650とガチンコ勝負させてみました。結論を言うとHD650の圧勝でした。まったく勝てなかったです。これは残念ながら同じ土俵にすら立てていない。 理由としては、第1に、ランダム再生をしてもK812は2519時間時に予想したよりも音質が伸びてくれなかった。このヘッドホンは以前からボリューム感がないとか、ボーカル域がぼやけるとか言ってきましたが、ランダム再生をしてもこれらの問題が多少は改善はしたが、完全に解決することはなかった。これらの問題が解決すればHD650に追い縋ってこれるかもと予想していたのですが・・・ 第2にK812はランダム再生を開始して486時間(総再生時間3005時間)の早い段階で音質がほとんど頭打ちしたのだが、HD650は3000時間以降の4000時間に至るまでじわじわ音質が上がっていったので、そこでも差が開いてしまった。というところ。 K812の最大の弱点はボリューム感の無さだと思います。K812を聴いた後ボリュームを全く弄らずにHD650を刺す。, HD120の出力インピーダンスは1Ω、K812の能率は110dB/VでHD650は103dB/Vなので、スペックからはHD650のほうが音が小さいはずです。ところが実際はHD650のほうが音が大きく感じる。HD600だとK812のほうがちょっとボリュームが大きいかなというくらい。ただし、このスペックはあくまで目安程度と考えてください。というのはHD600の説明書には97dB(1Vrms)と書かれていますが、HD650とHD600に6dBの開きはありませんし、おそらく97dB(1mw)の間違いだと思いますが、それくらい適当にしか表記していない項目のようです。そもそも1kHzで測定しても、周波数特性は平坦ではないので実使用での音量の取りやすさをそのまま表しているわけではありません。 なので、K812がスペックよりも音量とりにくくてもおかしくないかもしれません。ですが、上にも書きましたが、このボリューム感の不足と言うのは、実質的な音量でなく、ボリュームを物理的に上げているにも関わらず音量が上がっていないような感覚がついて回ると言うこと。K812のボリュームを上げてHD650と同じボリューム位置で鳴らしてもボリューム感の無さは解消しません。K812のボリューム感の無さは音量の単純な大小ではないと考えています。 なぜHD650のほうがボリュームが大きく感じるのか、私も良くわかりませんが、歪が小さいとか、SNが良いとか小音量でも細部が聞き取れるとか定位が良いとかそういうのが効いているのでしょう。苫米地さんっていう脳科学者の方が昔「人間は目で見たそのものの映像を見ているわけではない。視神経を通ってきた信号を元に脳で再構築したものを見ている」とどこかの記事で言っていたのを思い出しました。脳で再構築したものを見ているなら錯覚というものがなぜ起きるのか説明できるし筋が通ているなと思いました。彼は頭良いんだね。彼の考えを拝借すると、聴覚にも同じことが言えるのではないでしょうか。つまり「耳から入ってきた信号自体を直接聞いているのでなく、その信号を元に脳で再構成された音を聞いている。聞いているのは脳で再構成されたものだ。」と。この理屈なら実際は小さい音量でも脳が大きい音だと判定してそのイメージを構築してもおかしくありません。HD650の場合、小音量でも脳が大音量だと感じるような要素が再生されているということでしょうか。 ボリューム感が大きいほうが正しく再生できているのかは議論の余地があると思いますが、少なくともボリューム感がない音だと、実質音量を上げてもあんまり上げてる感じがなくて満足できません。これは何かしらの問題を抱えているからだと考えています。K812はまさにそれ。 K812と同じボリューム位置ですらHD650のほうがボリュームが大きく感じてしまう。言い方を変えるとHD650と比較してしまうとK812の音ってそれくらい貧相に聞こえてしまうのだから、それでHD650の正しいボリューム位置で比較したらどうなるか想像に難くないでしょう。とても悲惨な結果になります。「K812はHD650に絶対に勝てない」そう感じてもしょうがないのですよ。HD650考でHD650を褒めまくっていますが、あれは忖度しているわけでなく正直に書いているだけなんです。 まぁ?HD650, HD600, nighthawk carbon, K812の中ではHD650がボリューム感は特別に優れているので、HD650と比べるのは酷だと思いますが、HD600, nighthawk carbonと比べてもK812のボリューム感は劣っていると感じます。(※1) ここまでボリューム感ボリューム感と連呼してきましたが、別の言葉を使うと「K812は音量を上げていっても大音量時特有の気持ちよさを伴わない。常に小音量で聴いている感覚」対して「HD650は小音量でも大音量時特有の気持ちよさをある程度伴う。大音量にするとめっちゃ気持ち良いんだよ。」そう表現したほうが的確かもしれない。 ただし、K812はそんな欠点はあっても、K701よりはいい音と判定していますし、nighthawk carbonよりも音色は自然で抑圧感が伴わず、HD600よりもクリアでゆとりのある音が鳴っている。欠点はありながらも、K701, nighthawk carbon, HD600と比較する限りは光るものがあるヘッドホンです。そのあたりを勘案してHD650考ではあのような位置づけになっています。 以下はK701, HD600, K812, nighthawk carbon, HD650のテンプレ評価です。(HD650考に掲載したもの。音質順、後になるほど高音質) ◆K701 2022/10/20_追記_エージング時間 4245時間_エージングはDAPでALLランダム再生。(3559時間まではALL順再生) ATOLL HD120で試聴。 ランダムエージング開始から686時間。 ほぼ完璧だが、高域の歪感はやや気になる。聴きはじめは何も問題ない気がするのだが、長時間聴いていると疲れやすい感じ。やはり高域の歪感は出やすいヘッドホンなのかな。高域の歪感はHD650以上でnighthawk carbonより僅かに劣るかも。鮮烈さはnighthawk carbonを圧倒する。歪感はnighthawk carbonより僅かに劣ると言ってもnighthawk carbonhaは濁りによって歪感は誤魔化されるが、K701は濁りが少なく、歪もよりはっきりわかってしまうので、「nighthawk carbonより僅かに劣るかも」レベル以上に歪っぽく感じてしまう。曲によっては耳に突く音なんだよね。これがこのヘッドホンの欠点だろう。だがそれ以外の欠点は見当たらないといって良い。「ポテンシャルの割には高域の歪が多すぎるよ」とは思うけど。あと音像に芯が足りない感じが僅かにする。これもDT880E/600と同じですが、DT880E/600ほど酷くはありません。調子がいい時はこの癖は出ません。 傾向はニュートラル。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルをボーダーから0.10歩ほど超えていきている。解像度はEPT-700(02s91 LRSWHN741, 2.406Vrms, +470段(これを基準とする))の+690段程上。+1160段の解像度。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。HD650(約800時間,非ランダム再生エージング,HD120再生)はEPT-700基準だと+290段の解像度なので、K701はHD650の400%の解像度と言うことになる。奥行きは24m ◆HD600 2023/05/11_ランダム再生開始から2088時間(+Sound Improver One,2のテストに推定2400時間以上使用)_conductor V2+, 0.681Vrms, 300Ω 1006時間とほぼ印象変わらず。 傾向はニュートラルだがややほんの僅かに鈍り傾向。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルをボーダーから0.25歩ほど超えてきている。解像度はK701(エージングタイム4752時間以上, 1211曲のランダム再生, 0.6Vrms, +1160段(これを基準とする))の+120段程上。+1280段の解像度。K701の110%の解像度と言ったところ。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは24m(カンスト) nighthawk carbonと比べると音色はnighthawk carbonの方が1グレードレベルが上と言った感じで、解像度はnighthawk carbonの方が僅かに良いと言った感じ。一応ニュートラル傾向の範疇には入っているけど、少し曇る感じが出るのはnighthawk carbonもHD600も同じ。密度感はnighthawk carbonの方があるな。ただし、nighthawk carbonより音が曇る感じがするものの自然さではnighthawk carbonよりも良いという点は評価すべき点だろう。 ◆K812 2023/05/10_エージング時間 4033時間_エージングはDAPで1211曲ランダム再生(2519時間からランダム再生開始。ランダム再生開始から1514時間) 解像度的にはnighthawk carbon(3101時間ランダム再生エージング)基準だと以前と変わらないようだ。だが、モヤ感はわずかに改善されて音色もnighthawk carbonより良くなっている。ボリューム感は依然nighthawk carbonに劣っているが改善されている。トータルで見て以前はnighthawk carbonのほうが良いという評価だったが、今は互角という評価。 傾向はニュートラルだがややほんの僅かにソフト傾向。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はかなり良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルををボーダーから0.4歩ほど超えてきている。。解像度はK701(エージングタイム4752時間以上, 1211曲のランダム再生, 0.6Vrms, +1160段(これを基準とする))の+150段程上。+1310段の解像度。K701の112%の解像度と言ったところ。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは24m(カンスト) ◆nighthawk carbon 2023/05/05_nighthawk carbon_3101時間ランダム再生(+9576時間の通常の再生エージング)_DR.DAC3, 1kHz, 0.423Vrms, 25Ω 傾向はニュートラル。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はかなり良い。また機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルをボーダーから0.4歩ほど超えてきている。解像度はK701(エージングタイム4752時間以上, 0.6Vrms, +1160段(これを基準とする))の+180段上。+1340段の解像度。K701の115%の解像度と言ったところ。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは24m(カンスト) K812と比べると、音色はK812の方がほんの僅かだが良い。nighthawk carbonは抑圧された感じが僅かについて回る。だがクリアネスはnighthawk carbonの方が僅かに良い。解像度もnighthawk carbonの方が良い。また、K812は若干ボリューム感不足がついて回っている。パワー感ならnighthawk carbonの方が良い。どちらも似たり寄ったりの音質レベルなのだが、どちらかを取れと言われたらnighthawk carbonを選択する。 ◆HD650 2023/05/10_3202時間ランダム再生(+800時間の通常の再生エージング)_AIO, 1kHz, 0.750Vrms, 300Ω, 『フルボディ、ヴェリースイート』という癖はかなり少なくなって、かなりニュートラルに近い感じになった。これは再生した楽曲によっても多少ふらふらしている感じ。解像度はK812(1310段)の550段ほど上。1860段くらいだろうか。 傾向はニュートラルだがややほんの僅かに柔らか傾向。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はものすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルをボーダーから1.6歩ほど超えてきている。解像度はK701(エージングタイム4752時間以上, 1211曲のランダム再生, 0.6Vrms, +1160段(これを基準とする))の+700段程上。+1860段の解像度。K701の160%の解像度と言ったところ。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは24m(カンスト) (※1)アンプとの相性について。 試聴ではHD120を使いましたが、K812をiDSD Diabloにつないでみたところ。ボーカル帯のぼやけが改善しました。ボリューム感も改善しています。ただし、nighthawk carbonと比べるとパワー感/ボリューム感ともnighthawk carbonが上なので、相対的にはやっぱり劣っているのかな?という感じです。それでも聞き比べをせずにK812単独で聞く限りは気にならないレベルです。ボリューム感はHD650ではiDSD Diabloに切り替えても改善せずに音色が若干作為的になったり、抑圧感が出たり、開放的や広がり感の低下などiDSD Diabloの悪いところが出てしまってHD120の時よりも音質は低下してしまった感じです。逆にK812やnighthawk carbonの場合、iDSD Diabloのほうが好ましいと感じました。K812やnighthawk carbonでも自然さや解放感という意味ではHD120のほうが優れているのですが、iDSD Diabloの場合、パワー感/ボリューム感が改善してくっきりとした音が鳴るからです。もしやと思ってHD600でも視聴しましたが、HD650だけでなくHD600もボリューム感の改善がしなかったので、これはHD120の残留ノイズの影響かもしれません。ATOLLは低フィードバックを謡っててフィードバック量が少ない設計なので、残留ノイズが多い。EPT-700やER4SRでも残留ノイズがギリ聞こえるので。nighthawk carbonやK812だとギリ聞こえない感じ。聞こえないレベルであっても音質には影響しているのかもしれません。尤も同じ300ΩのHD600とHD650でもボリューム感の違いは出るのでアンプだけが影響しているわけではありません。ただし今回のK812の場合、HD120が結構音に影響しているようで、HD120で試聴するとHD650優位でK812は不利になる感じになるので一応言及しておくことにした。要は「アンプによってヘッドホンとの相性が出るよ!」ってこと。 ではiDSD Diabloで再生したらK812とHD650のどちらが音が良いだろうか?ということなのだが、iDSD Diabloで再生してもHD650のほうがK812よりも音が良いというのは変わらない。変わらないが正直言って、K812よりも若干いい程度になってしまった。HD120でHD650を絶賛していたあの音がなくなった。自然で音楽的なあの音だ。HD650考ではHD650を「『フルボディ、スウィート』といったHD650固有の演出も僅かで、演出より先に「より原音に忠実に」「より音楽的に」というものがくる方向性だ。」と言ったが、Diabloではそういう印象はない。Diabloだと音に曇り感が出るし、抑圧感が出るし、閉塞感が出る。HD120で鳴らす限り、HD650はあらゆる面でK812に負けないと感じていたが、iDSD Diabloで鳴らすとクリアネスと左右の広がり感は負けていると感じる。HD120の時はHD650と比べてK812が濁って聞こえていたが、DiabloだとHD650のほうが濁って聞こえる。。。アンプでここまで違っちゃうともうレビューとしては役に立たない気がするが、私のは何が書いてあろうが唯の読み物だから気にしないでおこう。 ボリューム感はHD650のほうがまだ優れているが、ボリューム位置固定で聞き比べてもHD650のほうが音が大きく感じるってこともなくなり、ちゃんとHD650のほうが音が小さく感じる。K812のボリューム感不足は確かに改善されているようだ。 解像度はHD120で鳴らした時のHD650を1860段、K812を1310段とすると、iDSD Diabloで鳴らした時のHD650が1535段、K812が1385段といった感じ。iDSD Diabloで鳴らす限り、HD650とK812の解像度差は10%くらいしかない。 HD120からDiabloに変えるとHD650は大幅に音質が落ち、K812はちょっと音質が良くなる。優れたアンプにつなげれば、どのヘッドホンも音質が良くなると思っていたが、それはあくまで机上の話で現実はそう単純でもないようだ。 ■K812の批判理由 音質の評価はここまで。最初にこのレビューはK812の批判記事だと警告を書いたが、私がこのヘッドホンを批判する理由は音質じゃない。確かにHD650には全く及ばないものの、nighthawk carbonと互角でHD600,K701よりも音は良いので、nighthawk carbonはもともと9万ちょいのヘッドホンだし、K701はかつてはHD650と同価格帯で売られていたヘッドホンであることを考えるとそこまでおかしな序列じゃないと思う。音質で言えばそんなに批判するようなヘッドホンではない。アンプによっても音が違うようだし。 私がこのヘッドホンを批判する理由はずばり配線だ。そして、この配線を平気でできるゴミくずのような精神性が嫌いなのだ。無論、配線が音質を考慮したものでないと批判するつもりはない。このメーカーに端からそんなことは期待なんかしていない。K701の配線見ればセンスがどうしようもないくらい無いのはわかるしの。 プラグが特殊なこともケーブルが3線でクロストークが大きく、バランス化もできないことも全部織り込み済みで買った。バランス化はそもそもする気ないし、ケーブルは交換すれば音質は良くなるだろうが、結局フィルムケーブルを通ってしまうという事実に苛まれるだろう。 ただ音質は配線だけで決まるわけではないし、配線の音質が良くなくても、ほかの要素で音質を稼いでいれば、他社のヘッドホンよりも良い音を出せるだろう。それにK701の音が良かったのでAKGのフラッグシップを買ってみたいというのがあった。 なので、私は配線について批判するつもりも、触れるつもりもなかったのだが、このヘッドホンの配線を見てあまりに常識外れの方法で実装されていたので、「このヘッドホンを作ったのは誰だー!」と叫びたくなったのである。 それでは、このヘッドホンの配線がいかに駄目か見ていきましょう。 ![]() このヘッドホンの渡線はフィルムケーブルでハウジングカップが取り付けられているリング裏に貼りつけられて這わせてあります。 プラグ→Lch Rchに分岐→ヘッドバンド→Rch側のリングといった経路で這わせてあります。 ![]() フィルムケーブルはリング裏をぐるっと回って、ハウジングの上のほうからドライバーに接続されています。ハウジングが動いても追従できるようリング裏に貼りつけられていたフィルムケーブルは途中からフリーな状態になっています。 ![]() ![]() ![]() ここでK812はハウジングとリングが直接接触して傷つかないようにゴム製のポッチが付いているのですが、その位置がおかしいことに気が付く。 上下のポッチがフィルムケーブルに当たるように実装されていて、ケーブルが可動部に挟まれるようになっている。下の部分はリングに張り付けられているので補強されていますが、上は稼働できるよう完全にフリーになっています。 設計段階で見ればまずいことがすぐわかるはずなので、ということは、これ見てなんとも思わないレベルの技術者が作ったということです。 ![]() ![]() こうしてみると渡線が目立たないように、そして美しく配線できるようにしたのは見て取れます。開発者は「美しく配線する方法を思いついたぜ!素晴らしいアイデアだ!」と思っていることでしょう。「所詮見てくれだけ」と思いますがね。 ![]() ハウジングを片手で持つと全重量がフィルムケーブルにかかります。なのでヘッドバンドの首の部分を持つようにしています。普通のケーブルでこれやられたら「おい!」と思うのですが、これは普通のケーブルよりも脆いフィルムケーブルです。 また、私は分解していませんが、"K812 断線"で検索すると画像が出てきますが、このヘッドホンはヘッドバンドの首の部分でもフィルムケーブルがはんだで継ぎはぎされていて、そこが断線するようです。 個人的には「フィルムケーブルを左右一体にしろよ!接点増えるだろ!こだわれよ!」と思うのですが、公式の紹介動画見ていると、ヘッドバンドとリングを組みつけた状態でドライバーユニット組みつけているのでフィルムケーブルを左右一体にしても問題なく組み立てられると思うのですが。。。「ケーブルは繋がってさえいればどれも一緒!接点増えても問題なし!見た目は大事!」という考えがひしひしと伝わってくる作りですね。こだわれよ!こだわったのは見た目だけ。彼らのこだわりは浅くて表層的。深くない。 また、ヘッドバンドが曲がったときにフィルムケーブルにテンションがかからないように遊びを設けていないといけないように思うのですが、彼らは本当にいいかげんだから確保していない可能性が高いんじゃないかな。見てないから分からないけど。けど何言ったところで断線が頻発しているという結果がすべてを物語っているよね。 ■K812は買いか? 残念ながら私の結論は「絶対買うな」です。音が良い悪いの問題じゃない。フィルムケーブルを渡線にしていたのは知っていたが、実際に手にしてみると予想以上に耐久性を配慮しない設計になっている。ケーブルが可動部に挟まれる鬼畜仕様。「どこの3流設計者が作ったの?」というレベル。なので、このヘッドホンはコレクターがコレクションの一つにするには問題ないが、使い倒すには絶対に向かないヘッドホンだ。(私の個体ははまだ壊れていませんが)恐らくすぐ壊れてしまうであろうヘッドホンに10万,15万も払えないでしょう。 ましてこれがプロ用?うーん、冗談かな? このヘッドホンを買うときは、耐久力に難があると言われていたのは知っていましたが、AKGのフラッグシップが欲しくて「丁寧に扱えば大丈夫だろう」という確証性バイアスを働かして買ったのですが・・・失敗でした。ここまで常識を逸した作りとは思いませんでした。 また良いものを買ったという満足感、所有感もありません。それはこのヘッドホンが私にとって良いものではないからです。私にとって良いものと言うのは「どれだけ分かっている奴が作っているか」なのですが、このヘッドホンは分かっている、分かっていないという次元以下の無神経で無頓着な3流が作っているとしか感じられない。あのフィルムケーブルの処理を見るたびに「このヘッドホンは無神経で無頓着な3流が作ったんだな」と思ってしまう。音質を考慮した結果、脆くなってしまったと言うこともありますが、K812の配線に音質を考慮している形跡は全く見られません。むしろ音質が悪くなるようなことばかりやっている。だから擁護したくても擁護のしようがないんだよね。音質1流、作り5流。総合評価では値段が高いだけの4流品と言う感じでしょうか。(この製品には3流品の称号すら与えられない。買うなと言うレベルだからね。5流って言わなかっただけありがたいと思って。) まぁ、私がケーブルに拘っていて他人より評価が厳しいのかもしれませんし、他の人は「この程度のことで」と思ってるのかもしれませんけど、私にとっては「この程度のことすら出来ないの?」と言った印象。例えるなら「トイレに行って手を洗わないで握られた寿司を出されているようなもの。」いくら美味かろうが食う気にはなれん。ヘッドホンの完成度をHD650が100点とすると、K701は70点。K812は・・・10点と言ったところ。 そもそも、配線がまともに出来ていないのは、気配りが足りないからじゃない。馬鹿でもちょっと見れば分かる程度のことなので、「気が付かなかったからしょうがない」ではないのだ。結局、K812を作った開発者には探求心と向上心が足りていない。「教科書レベルのことを学んで今の自分の知識は完璧で、もう学ぶものはない」と胡坐をかいている。なので自分の知識の範囲内では努力をするが、そこから外れたとたん、ぞんざいな扱いをする。ケーブルで音が変わることを認識していれば、あの配線は絶対にしない。そもそも、ケーブルで音が変わると認識していようがいまいが、あの配線は常識的にアウト。彼らは教科書レベルのことすらできていないのですよ。それで胡坐かいてるんですよ。もっとも彼らの教科書には「配線は繋がってさえいればヨシ!音質も耐久性も問題ナシ!」と書かれているのだろうけどね。 要は「どうして音が変わったのだろう?」という探求心、「もっと良いものを作ろう」という向上心があったらK812はあんなアホみたいな配線されてなかったし、もっと違った形で世の中に出ていただろうと言うこと。ただし、K812の開発者が努力していないと言うわけではありません。音を聴いたら自分の知識の範囲内では努力しているのは見て取れるのでね。努力をしていないと言ったら嘘になる。使っていて「音と装着感とデザインには拘ったんだな」と感じられるものはあるし、K812は決して適当に作ったヘッドホンではありません。ですが探求心と向上心が明らかに足りていない。 そう言ったことが読み取れてしまうので、私はこのヘッドホンの根底に流れる精神性とかスピリッツというものが嫌いなのだ。音と装着感とデザイン以外のすべてが気に入らない。探求心と向上心を欠いた製品は果たしてフラッグシップとして誇れるものなのでしょうか?それとも音さえ良ければOK? 私も原音の頂に上りきった完璧な製品なら文句言いません。そもそも完璧なものが作れる技術者なら、K812のような配線は絶対にしないでしょうがね。あの配線では原音の頂には絶対に到達できない。 原音の頂に上っていく為には探求心と向上心は絶対に必要なものです。現状完璧なものが作れない以上、フラッグシップ機には探求心と向上心は内包していてほしい。ぶっちゃけK812よりnightowl carbon/nighthawk carbonの方がフラッグシップしてますよ。 それから「もっと良いものを作ろう」という向上心に関しては開発者だけでなくAKG自体にも問題がある。このヘッドホンは登場してから9年経ちますが一切の改修予算をつけないで構造的欠陥をそのままにしているわけですから。お金がなくて改修予算が出せないと言うことなんでしょうか? K812が売れまくれば改修費用が捻出できるのでしょうか? だとしても私はこのヘッドホンを人に勧めるなんて出来ません。買ってしまった人がかわいそうだ。それでもAKGを応援したいと言う人は買ってあげてください。K812以外のAKG製品でも良いけど。 それでもあえてK812を買う理由をあげるなら「AKG信者でAKGのフラッグシップが欲しい」とか「高い脱会料払ってAKG信者辞めたい(作りに幻滅するので)」くらいしか思いつかない。あと「音と装着感とデザイン」のみを評価項目にするなら、このヘッドホンは良いヘッドホンに見えると思う。まぁ、K812の配線がご愛敬と思える心の広い人は買えばいいんじゃないかな。また、コスパ目的で買うものではありません。このヘッドホンは8万円程度で売ってた時期もありましたが、その価格でならコスパは良いと思いますが、その価格であってもコスパ勝負ではK701, HPT-700, nightowl carbon, nighthawk carbonには勝てません。音質もK701よりちょっと良いくらいで、「K701でこの音なんだからK812はどんな音なんだろう?」と期待して買うとがっかりしてしまうでしょう。そもそも音のキャラクターからして違います。確かにK701より音良いですが圧倒することはありません。HPや箱にはsuperior reference headphonesと謳われていますが、正直それは言いすぎでしょう。私の印象ではまだまだreference headphonesレベルの音ですね。本体にはそう刻まれていますがね。これはK812のコスパが悪いと言うよりも、K701が19800円。この値段の方がおかしいと言う事です。もちろん、ここで言うコスパは音質のみのコスパです。作りを考慮するとK812は地雷。K701は雑巾イヤパッドが気にならない物好きで、伝説を体験したい人は買えば?と言う感じ。しかし私は経験していませんが、K701も断線報告が多いので、そういうトラブルが嫌な人は高くてもHD650を買った方が満足度は高いと思う。音質云々はおいといてHD650は道具として見たら完璧なヘッドホンだからね。 AKGさんK812を批判しまくってごめんなさい。ほんとにひどい作りです。製作者に対して怒りを覚えるレベルでひどいです。こんなにひどい作りなのは、根本的な心構えが間違っているからです。K812は失敗作だけど、なるべくしてなったとしか言い様がありません。改心してください。 ■K812まとめ K812ね。。。うーん、絶対買わない方が良いよ。これはゴミ。 。。。。いや、ゴミとは言ったが、正確には配線がゴミ。そしてこの配線しちゃう精神性がゴミ。そんな精神性を元にできたK812は他社のフラッグシップに対して誇れるものではない。ただし音は良い。そこは腐っても鯛。腐ってるがな。K812が悪いように書いたが、K812はむしろ被害者だと思える程ひどい作りだ。この件に関しては開発者とAKGが100%悪い。 20231012_追記 以前K812はボリューム感が悪いと書いたが、エージング時間7000時間あたりで、ボリューム感がかなり改善して、nighthawk carbonやK701と比べて遜色ないレベルになったので、ここに記録しておく。評価はHD120で行った。 2023/10/12_エージング時間 7752時間_エージングはDAPで1211曲ランダム再生(2519時間からランダム再生開始。ランダム再生開始から5233 時間) 傾向はニュートラルだがややほんの僅かにソフト傾向。詰まり感なし。閉塞感なし。抑圧感なし。音色はすごく良い。まだ機械の存在を忘れて音楽に没頭できるレベルををボーダーから1.00歩ほど超えてきている。。解像度はK701(エージングタイム4752時間以上, 1211曲のランダム再生, 0.6Vrms, +1160段(これを基準とする))の+250段程上。+1510段の解像度。K701の130%の解像度と言ったところ。解像度に段という単位を使うのはどうかと思うんだけど、伝統だね。奥行きは24m(カンスト) K812とnighthawk carbonを比べると、nighthawk carbonもエージングを続けてきていて5212時間のランダム再生(+9576時間の通常の再生エージング)に達して、音質も以前より上がっているのですが、それでもK812の方が音質が良いかなという感じ。解像度は100段くらい上で7%増し。一番違うのが音色で、nighthawk carbonは音が硬くしなやかさが不足している。情緒が感じられないし雰囲気が出ない。それゆえ生命感が不足している。比べるとだけど。 K701と比べるともっと差が出て、K701は歪でクリアネスを稼いでいるのがすぐにわかるし、情報量が不足しているのでかなーり痩せて聴こえる。 私K812の開発者のことは一切認めてないけど、音自体は良いよ。正確には良い音を出せるポテンシャルを持っているが正しいかな。 それと別にK812は8000時間近く鳴らさないといけないと言っているわけではありません。8000時間て約1年近く鳴らすということなので、それが現実的でないのは理解しています。さすがの私も3か月とか半年なら我慢できるけど、1年は心折れる。だけど実際に試して音が変わったから事実を書いただけなのです。
2022/11/23 執筆
2022/11/23 公開
|